2015年11月に大人が楽しめる電子書籍絵本レーベル「絵本屋.com」を本格始動させ、作家陣と意欲的に新作づくりを次々と展開していた私は早々に大ヒット作品を電子書籍市場に送り出したいと考えていました。
その思いを全く同様に捉えてくれていたのが、絵本屋.com立ち上げメンバーのサトウヒロシ氏ですが、彼は毎月1冊の作品づくりに取り組み、その作品群の殆どがアマゾンキンドルストアの売れ筋絵本ランキング1位を獲得する人気ぶりでした。
しかし、スグに課題が判明しました。
元々、リサーチ済みでしたので想定内の課題ですが、キンドル内では絵本の読者は非常に少なく、絵本ランキングで1位になっても大した反響を作れなかったのです。
そうすると、狙うのはキンドルの全電子書籍のランキングである総合ランキングとなります。
これは相当な難易度があります。
しかし、そのレベルまで到達しないと全く儲からないのもよく解り、何とかならないかと二人して焦っていました。
そんな最中、ヒット作品づくりのアイデア探しに絵本学会の大会(2016年5月28日@京都女子大学)に参加したのですが、そこで我々が味わったのは旧態依然としたクラシカルな絵本に酔いしれる学会会員及び参加者の光景でした。
私は絵本学会に数年間、会員としてその動向をウォッチしてきたのですが、残念ながら絵本に対する革新的な取り組みは感じられませんでした(これは私の立場での意見ですのでご了承下さい)
上記の大会に参加した際に、二人で今は無き、京都の新京極商店街にあったシェーキーズで安酒を交わしながら、現況の絵本市場の危うさを話し合い、やはりもっと大人が堪能できる質の高い絵本を創らないと!と激論を交わしました(確かビールを3杯くらいとピザやパスタを食べながら※サトウヒロシ氏は根っからのフライドポテト好きのため、それを頬張りながら)
そこで私が彼にテーマとして投げかけたのが、日本人なら大概好きな「自己犠牲」だったのです。
その振りを受けて、彼は「自己犠牲ねぇ、解りますよ、勿論。ただ、お涙頂戴な感じになったらダメですよね、そして誰かが死ぬとかもダメです。ボクはそういうの、好きじゃないから」と私に返答しました。
私「そうそう、ボクもそう思いますよ。中々難しい注文ですが、サトウさんならきっと描けますよ。いくつかシナリオを考えてみてもらえないですか」
こんなやり取りをして、その日は別れたと思います。
※いつもなら、カラオケやラウンジに行って朝帰りな二人ですが、その日は実にクールに帰宅しました。
そして数日後にいくつかのシナリオがサトウヒロシ氏から挙がってきたのですが、その中の一つに!
絵本屋.comとは
2015年11月からサービスを開始した、大人向け電子書籍絵本レーベル。大人が笑える、泣ける、癒されるといったピュアな感情を得られる絵本を所属の絵本作家陣と共に創作し、各種電子書籍絵本ポータルサイトで販売している。代表作のサトウヒロシ作「明日死ぬかもしれないか今お伝えします」はアマゾンキンドルストア総合ランキング第2位を獲得する大ヒット作(2018年12月にMBS「ちちんぷいぷい」に今井とサトウヒロシが生出演で作品が放送されている)絵本屋.comの一部の作品は海外でも人気を博し、中国、台湾、韓国、アメリカで紙書籍、電子書籍で流通している。